朝食パン一枚で1時間!?ついやってしまう対応と振り返り

みなさんは、パン一枚を食べるのに1時間かかる小学生を見たことがありますか?

そもそもそこまで時間をかけず途中で終わらせるのがいい。と言う声もあるでしょう。

これは、児童養護施設で働く私が直面した、ある朝の出来事です。

対応の失敗談として読んで頂きたく思います。

その日の朝食はパン。A君は1枚のパンを食べ終えるのに1時間もかかっていました

最初は優しく声をかけていました。

「時間を意識して食べようね。」

「準備、間に合うかな?」

そう伝えると、A君は「はーい」と返事をするものの、食べるペースは変わりません。

さらに、食事中に周りに気を取られて遊び出したり、パンにジャムを塗ったあと、パンではなくジャムだけを食べたりしていました。

その様子を見ているうちに、私は段々とイライラしてしまいました。

登校の時間は迫っている。準備もまだ終わっていない。これ以上待つのは無理だ、と感じた私は、つい声を荒げてしまいました。

「何してるの!もうふざけないで、早く食べなさい!」

叱られたA君は黙り込み、食べるスピードは少し上がったものの、どこかぎこちなくなり、そのままの空気で朝の準備を急いで進めることになりました。

叱りつけたあとに振り返ったこと

対応する最中は、自分の感情のままに動いてしまい、冷静に立ち止まることができませんでした。

けれども、A君を見送った後、叱りつけた自分の対応を振り返ってみました。

「これで本当に良かったのだろうか?」

確かにA君は食べるスピードを上げたけれど、それはただ叱られたから焦っただけだったのではないか。

むしろ「食事を楽しむ」ことや「自分で時間を管理する力」を育てるどころか、A君の気持ちを追い詰めてしまったのではないかと感じました。

そもそも、A君が朝食をなかなか食べ終えられない理由は何だったのだろう。

それを十分に理解しようとしないまま、「早く食べるべき」という私の理想を押し付けてしまったのではないか、と考えました。

背景を考えてみると見えてくること

A君が食べるのが遅い背景には、これまでの生活の経験不足があるのかもしれません。

例えば、家庭環境によっては、時間を意識して行動する習慣が十分に身についていないことがあります。

また、急かされた経験が多かった場合、「どうせ叱られるならゆっくりしよう」と無意識に思ってしまうこともあります。

さらに、子どもには「自分で考えて行動する力」がまだ十分に育っていない段階があります。

大人にとっては当たり前のことでも、子どもにとっては学んでいる最中のことがたくさんあるのです。

急かすだけでは解決しない

私が叱ったことでA君は焦り、結果的にパンを食べるスピードは上がりましたが、これは「できた」のではなく「やらされた」だけ。

こうした体験を繰り返してしまうと、子どもは「自分でやる気を出して行動する力」を身につけるどころか、「どうせ何をしても叱られる」と感じてしまい、自信を失うことにもつながりかねません。

では、どうしたらよかったのか?

今回のケースから、改善のために考えた具体的な方法をご紹介します。

私ができたかもしれないこと

1. 明確なルールと視覚的なサポートを用意する

「あと○分で食べ終わろう」と具体的な時間を伝える。そして、砂時計やタイマーなど、子どもが時間の流れを視覚的に理解できるものを使うと効果的です。子どもにとっては「時間を意識する」こと自体が一つの学びです。

2. 環境を整える

食事中に集中できるよう、テレビやおもちゃを片付けるなど、周りの刺激を減らす工夫も大切です。逆に、楽しい気持ちを引き出すために「どっちのジャムが好き?」と選択肢を与えたり、応援するような声かけをするのもいいですね。

3. 一緒に考える時間を作る

「どうしたらパンを早く食べられるかな?」とA君自身に考えさせてみるのも一つの方法です。大人が教え込むのではなく、子どものペースで「解決策」を見つける時間を一緒に作ることが、長期的な力につながります。

支援者として、親としての気づき

振り返ってみると、今回の出来事で余裕を持てなかったのは、A君ではなく私自身だったのだと感じます。「こうあってほしい」と子どもに期待しすぎたり、理想を押し付けたりすると、結局は焦りやイライラにつながり、それが子どもにも伝わってしまうのです。

子どもを動かすことばかりに注力するのではなく、まずは大人の側が環境を整えたり、気持ちを落ち着けたりする必要があるのだと痛感しました。

子どもと一緒に育つということ

子どもはまだ成長途中であり、「自分でできる」ための練習中です。その過程で、どうしても失敗したり、時間がかかったりすることがあります。そんなときに「なぜできないんだ」と急かすのではなく、「どうしたらできるようになるだろう」と一緒に考える姿勢が大切です。

私もA君との日々を通して、子どもに育てられている部分がたくさんあると感じます。叱ってしまったことを反省しつつ、その経験を糧に次はどうするかを考え、共に成長していきたいと思います。

まとめ

子どもとの関わりは、日々の小さな積み重ねです。イライラすることもあれば、失敗することもあります。でも、そんなときこそ「自分の対応を見直すチャンス」だと思うようにしています。

親も支援者も、完璧である必要はありません。子どもと一緒に悩み、成長しながら、少しずつ理想の形に近づいていけたらいいですね。