子育てをする中で、専門的な考え方を持ち込む親御さんはほとんどいないかも知れません。
ほとんどは、学校で少し習った程度であったり、もしくはSNSから得た情報であったりではないでしょうか。
発達段階に関する有名な表や理論はいくつかありますが、以下の3つが特に有名です。
それぞれ、発達心理学や教育学でよく使われており、SNSで紹介される子育てのヒントは、ここがベースになっていることもあります。
基礎として把握しておくだけでも、あなた自身の子育ての役に立つかもしれません。
興味がある方はぜひ読んでみてください。
エリクソンの心理社会的発達段階 (Erikson’s Psychosocial Development Stages)
エリクソンの発達段階?
エリクソンは、子どもから大人までの成長を8つの発達段階に分け、それぞれに「乗り越えるべき課題」があると言った人なんです。
この課題をクリアすると、自己肯定感や社会性が育まれますが、つまずいても後からやり直しが可能です。
エリクソンの理論は、親が子どもの成長を長い目で見守るためのヒントになります。
「今、子どもにとって大切なものは何か?」を考えるきっかけとして活用してみませんか?
以下は各段階の特徴と具体的な事例を書いていきます。
【段階 年齢】
・課題(心理社会的危機)
・ポジティブな結果
・ネガティブな結果
【乳児期 0~1歳 】
・信頼 vs 不信
・希望
・不安
この時期の成長で大切なのは
「信頼感を育てること」です。
エリクソンの発達段階でいう乳児期の課題は、「この世界は安心できる場所だ」と感じられること。
そのためには、ママができるだけ赤ちゃんのサインに応えてあげることがポイントです。
例えば、赤ちゃんが泣いたとき。
すぐに抱っこして、「どうしたのかな?」と声をかけることで、赤ちゃんは「自分が求めると、誰かが応えてくれるんだ」と安心します。
この積み重ねが、信頼感や自己肯定感を育てる土台になります。
でも、完璧に応えられなくても大丈夫なんです。
ママも疲れてしまう日があるのは当たり前です。赤ちゃんは、「いつも完璧」よりも、「普段は安心できる」ということの方が重要です。
無理せず、自分も休む時間を作りながら接してあげてください。
あなたの優しさと努力は、赤ちゃんの心にしっかり伝わっていると思います!
【幼児期前期 1~3歳】
・自律性 vs 恥・疑惑
・意志
・自信の欠如
この時期の子どもは、
「自分でやってみたい!」
という気持ちがどんどん育つ大事な時期です。
親が見守りながら、子どもの挑戦を応援することが信頼感から自立心へのステップになります。
例えば、スプーンでご飯を食べたがるけれど、うまくできなくてこぼしてしまうことがありますよね。
このとき、親が「自分でやりたい気持ち」を尊重しつつ、手伝いすぎないことがポイントです。
「一緒にやろうね」「少し手伝っていい?」
と声をかけながら見守ることで、子どもは「自分でできた!」という達成感を得られます。
反対に、失敗するたびに叱ったり、すべて親がやってしまうと、子どもは「自分はできない」と思い込み、恥や疑いの感情が育ちやすくなります。
失敗も成長の一部!
多少の散らかりや時間がかかることを受け入れながら、「やってみよう」という気持ちを大切にしてあげてください。
子どもの小さな自立の芽を育てる、貴重な時期だと認識することが大切です。
【幼児期後期 3~6歳】
・ 主導性 vs 罪悪感
・目的
・過剰な抑制感
この時期の子どもは、想像力が豊かになり、
「やってみたい!」
「こんなことができるかも!」
という自主性が芽生える時期。
親は、その気持ちを温かく受け止め、サポートすることが大切です。
例えば、「お手伝いしたい!」と言われたとき、できる範囲で任せてみるといいでしょう。
お皿を運んでもらったり、おもちゃを片付けてもらったりすることで、子どもは「役に立てた!」という自信を得られます。
一方で、「なんでできないの!」と厳しく叱りすぎたり、「まだ無理だから」と挑戦を止めてしまうと、子どもは「やっちゃいけなかったのかな」と罪悪感を抱きやすくなります。
この時期は、たとえ失敗しても「いいアイデアだったね!」「次はこうしてみようか」と肯定的に伝えることが大切です。
子どもが自由に挑戦し、失敗を通じて学ぶ環境を作ることで、自主性が育ち、のびのびと成長していきますよ!
【学童期 6~12歳】
・勤勉性 vs 劣等感
・有能感
・自信喪失
この時期、子どもは学校や家庭で新しいことを学び、「できる!」という感覚を積み重ねながら自信を育てます。
一方で、周囲と比較されたり失敗を否定されると、自分を「できない子」と感じてしまい、劣等感が生まれやすくなります。
例えば、子どもが学校で描いた絵やテストの点数を持ち帰ったとき。
「よく頑張ったね」
「ここが面白いね!」
と努力や工夫を褒めることが大切です。
結果ではなくプロセスを認めることで、子どもは「挑戦することが楽しい」と感じられます。
反対に、成績や他の子どもと比べて「もっと頑張らないと」と言い続けると、自信を失ってしまうこともあるようです。
またこの時期は、「あなたの努力は価値がある」というメッセージを伝えることがポイントです。
小さな成功体験の積み重ねが、未来への挑戦心を育てる土台になります!
【青年期 12~18歳】
・同一性 vs 役割の混乱
・忠誠
・同一性の欠如
この時期、子どもは「自分らしさとは何か」を探し、自分の価値観や生き方を模索します。
一方で、大人からの押し付けや周囲との比較が強いと、自分が何者か分からなくなり、混乱を感じやすくなります。
例えば、進路や趣味について迷っている子どもがいたとき。
「あなたはどうしたい?」
「何に興味があるの?」
と本人の意見を尊重することが大切です。
親が一方的に方向を決めてしまうと、子どもは「自分で選べない」と感じ、自信を失ってしまうこともあります。
この時期は失敗や遠回りも成長の一部です。
「いつでも応援してるよ」
「どんな選択でも大丈夫」
と温かく見守ることで、子どもは安心して自分の道を探せます。
青年期は、「自分はこれでいいんだ」と思える基盤を作る大切な時期なのです。
親のサポートが、子どもの未来への自信に繋がりますよ!
【成人初期 20~30代】
・親密性 vs 孤立
・愛
・孤独
この時期は、仕事や結婚、友情などを通じて、他者と親密なつながりを築き、自分の居場所や役割を見つける重要な時期です。
例えば、20〜30代では仕事での信頼関係を築いたり、恋愛や結婚を通じてパートナーと深い絆を結んだりします。
この時期に大切なのは、
「自分をさらけ出し、相手と正直に向き合う勇気」
です。
そうすることで、相手に受け入れられる安心感が生まれ、より強い絆が築かれます。
一方で、失敗や傷つくことを恐れて心を閉ざすと、
「本当の自分を分かってくれる人はいない」
と孤独感を抱きやすくなります。
その結果、深い人間関係を避けることにもつながりかねません。
施設から巣立った子どもたちの中にも、自分自身の生い立ちから、傷の回復が十分にされず社会に出た時、孤独感を抱いて辛くなってしまう子を何人も見てきました。
深く傷ついた子(この時期すでに大人)のケアはもの凄く難しく、見ていてとても切なくなるものです。
しかしながら、20〜30代は、自分の弱さも含めて受け入れ、それを共有することで、信頼できる人間関係を育てるチャンスです。
この時期に得たつながりや経験は、人生全体の豊かさを形作る大切な土台となります。
焦らず、まずはこれまでの自分を認め、自分らしいペースで関係を深めていきましょう!
【中年期 30~60代】
・生産性 vs 停滞感
・世代性
・自己満足的態度
この段階では、仕事や家庭、地域社会での役割を通じて「次の世代や社会に貢献すること」が大きなテーマとなります。
一方で、自分の成長や周囲とのつながりが感じられなくなると、停滞感や孤立感を抱きやすくなります。
例えば、30〜60代は、子育てや仕事で多忙な時期ですが、
「自分の経験を活かして子どもを育てる」
「後輩をサポートする」
「地域活動に参加する」
など、他者のために時間やエネルギーを注ぐことで、自分自身の存在意義を感じることができます。
一方で、「仕事ばかり」「家庭のことばかり」で自分のことを後回しにしすぎると、心が疲れてしまうことも。
この時期には、自分自身の成長や学びを大切にすることも欠かせません。
趣味を楽しんだり、新しいスキルを学ぶことで、心の充実感を得ることができます。
中年期は、人生の経験が最大限に活かされる時期です。
家族や社会の中で役割を果たしながら、自分の時間も大切にし、「誰かのために、そして自分のために生きる」というバランスを取ることで、豊かな人生を送ることができるでしょう。
【老年期 60代以降】
・自我統合 vs 絶望
・英知
・後悔
この段階では、これまでの人生を振り返り、
「自分の人生は意味があった」
と感じることで心の平安を得ることがテーマとなります。
一方で、後悔や満たされなかった思いが強いと、
「自分の人生は失敗だった」
と絶望感を抱きやすくなります。
例えば、老年期には、家族や地域社会でのつながりを楽しむ人が多い一方で、「もっとこうすればよかった」と思うこともあるかもしれません。
この時期に大切なのは、過去の成功や失敗を受け入れ、「今だからこそできること」を見つけることです。
たとえば、孫と遊んだり、地域の活動に参加したり、趣味や学びを楽しむことが、人生に新たな意味を与えてくれます。
また、自分の経験や知恵を次世代に伝えることで「社会に貢献できた」と感じられるようになります。
老年期は、これまでの人生を統合し、「自分の人生に価値があった」と思える時期です。
これには、過去を受け入れ、今を楽しむことが重要です。
どんな年齢でも、新しい幸せを見つける可能性は無限大です!
ピアジェの認知発達理論 (Piaget’s Cognitive Development Theory)
ジャン・ピアジェは子どもの知的発達を段階的に示し、それぞれの段階での特徴的な思考のパターンを説明しました。
【感覚運動期 0~2歳】
・五感と運動を通じて世界を理解し始める。
・対象の永続性を学ぶ。
赤ちゃんが「見て、触れて、動いて」世界を知る初めての学びの時間です。
この時期、赤ちゃんは一つひとつの体験を通じて、「目に見えないものでも存在する」「これを触るとこうなる」といった基本的な理解を少しずつ育てていきます。
【どんなことが起こるの?】
例えば、生後数か月の赤ちゃんは、おもちゃを握ったり、口に入れたりして「これって何だろう?」と確かめています。
そして、6〜8か月ごろになると、「隠されたおもちゃでもまだある!」と気づくようになります。これを「物の永続性」といい、隠したものを探す遊びが楽しくなる時期です。
【どうやってサポートする?】
赤ちゃんは「手で触る」「口で感じる」「目で追う」など、自分で体験することで学びます。
そのため、以下のような工夫がおすすめです
- 触って楽しめるおもちゃを用意:ガラガラや柔らかい積み木、布絵本など、いろいろな感触や音を楽しめるものが良い刺激になります。
- 隠し遊びを取り入れる:「いないいないばあ」やおもちゃを布で隠す遊びをすると、赤ちゃんは興味津々で探そうとします。
- 安全な環境作り:赤ちゃんは何でも触りたがるので、小さなものや危険なものは手の届かない場所に置きましょう。
【親御さんに伝えたいこと】
この時期、赤ちゃんが手に取ったものを口に入れるのは「これって何だろう?」と学んでいる証拠です。
親としては心配になるかもしれませんが、それも成長の一環。
危険なものを遠ざけ、赤ちゃんが安心して探索できる環境を整えるだけで大丈夫です。
感覚運動期は、赤ちゃんが世界との初めてのつながりを感じる時期。
何度も同じ遊びを繰り返したり、突然新しいことに挑戦したりする赤ちゃんを見守りながら、一緒に楽しんでみてくださいね。
親が笑顔でいることが、赤ちゃんにとって一番の安心感になります!
【前操作期 2~7歳】
・言語の発達
・自分中心的な思考
・論理的思考の欠如。
この時期は、子どもが言葉やイメージを使い始め、
「自分の頭の中で物事を考える力」
が育つ時期です。
ただし、まだ論理的な思考は苦手で、目に見えるものや自分の視点を中心に物事を考えがちです。
この時期、子どもたちは想像力が爆発的に広がり、世界がとても魅力的に映ります。
【どんなことが起こるの?】
- 自己中心性:子どもは自分の視点で世界を見ます。たとえば、「お友達におもちゃを取られて悲しい」と思っても、「相手も欲しかったんだ」という考えには至りにくいです。
- アニミズム思考:物に命があるかのように感じます。たとえば、「ぬいぐるみが寂しがるから一緒に寝る」など、子どもの世界はとても生き生きしています。
- ごっこ遊びの発達:この時期、空想の世界でおままごとやヒーローごっこが大好きになります。自分なりのストーリーを作ることで創造力が育まれます。
【どうやってサポートする?】
この時期は、子どもの想像力を伸ばすチャンスです。
以下のようなサポートはどうでしょうか。
- 共感する言葉をかける:「そうなんだ、ぬいぐるみが寂しがるんだね」と、子どもの気持ちや考えを受け止めることで、自分の意見を話す楽しさを感じさせましょう。
- ごっこ遊びを一緒に楽しむ:お店屋さんごっこやおままごとなどに参加してあげると、子どもは自分の考えを自由に表現しやすくなります。
- 物事を視覚で伝える:まだ抽象的な説明は難しいので、絵や図を使ったり、実際にやって見せたりすると理解しやすくなります。
【親御さんに伝えたいこと】
この時期の子どもは、「どうして?」と何度も聞いてきたり、大人には想像もつかない発想をしたりします。
それは、頭の中で世界を理解しようとしている証拠。
親としては「何度も同じ質問をする」「ごっこ遊びが終わらない」と疲れることもありますが、子どもの考えや想像に寄り添うことで、安心感と自己肯定感を育てることができます。
前操作期は、子どもが目に見えるものや感じたことを通して、自分の世界を広げていく時期。
親が笑顔で一緒に楽しむことで、子どもの好奇心や想像力がさらに伸びていきますよ!
【具体的操作期 7~11歳】
・論理的思考が可能になる
・具体的な物事に対する理解が進む。
この時期は、子どもが現実的で論理的な思考を少しずつ身につける時期です。
この時期、子どもは「物事を具体的に考える」ことができるようになり、物の数や量が変わっても、その関係を理解できるようになります。
しかし、まだ抽象的な考え方は苦手で、目の前にある物や現実的な事例をもとに考えます。
【どんなことが起こるの?】
- 保存の概念:物の形が変わっても、その量や数は変わらないことを理解します。例えば、ジュースを別のコップに移したときに「コップが違うけど、量は同じ」とわかるようになります。
- 逆行的思考:物事を逆に考えることができるようになり、「3+2=5」と理解できると、同じように「5-2=3」とも考えられるようになります。
- 分類や順序付け:物をグループに分けたり、順番に並べたりすることが得意になります。たとえば、動物を種類ごとに分けたり、数字を小さい順に並べたりできます。
【どうやってサポートする?】
- 論理的な質問を投げかける:子どもが「なんで?」と聞いてきたときには、具体的な事例を使って答えてあげると理解が深まります。
- 分類や整理を一緒にする:おもちゃを種類ごとに並べたり、絵本をテーマ別に分けたりすることで、子どもの分類力や順序を考える力を育てます。
- 遊びを通じた学び:数の概念を学ぶために、カードゲームやボードゲームで遊ぶと楽しく学べます。
【親に伝えたいこと】
この時期、子どもは論理的に物事を考える力がついてきますが、まだ抽象的な思考は難しいので、具体的な例を使って説明してあげると理解しやすくなります。
親としては、子どもの「どうして?」に対して、わかりやすく具体的に答えることが大切です。
【形式的操作期 12歳以降】
・抽象的思考や仮説の検討が可能になる。
この時期は、子どもが抽象的な思考や仮説を使って問題を解決できるようになる時期です。
この時期になると、子どもは物事を目の前の現実にとらわれずに、理論的に考えたり、仮定に基づいて推論したりできるようになります。
【どんなことが起こるの?】
- 抽象的思考:目に見えないことや、実際に起こっていないことを考える力が身につきます。例えば、「もし空に星がなかったらどうなるか?」といった質問にも答えられるようになります。
- 論理的推論:物事を論理的に順序立てて考えることができ、因果関係を理解したり、仮説を立ててその結果を予測することができます。
- 自己中心的思考の減少:自分の立場を超えて、他者の視点で物事を考えることができるようになります。社会的な問題や倫理的な問題に興味を持つことも多いです。
【どうやってサポートする?】
- 自由な意見交換をする:子どもが自分の意見を表現できるように、意見を聞いたり、話し合ったりする機会を増やしましょう。
- 問題解決を一緒に考える:日常生活の中で、簡単な問題解決を一緒に考えることで、論理的思考を育むことができます。例えば、どの道を通れば早く家に帰れるかを一緒に考えるなど。
- 抽象的な質問を投げかける:子どもが抽象的に考えられるようになる時期なので、「どうして空は青いの?」といった質問をしてみると良い刺激になります。
【親に伝えたいこと】
形式的操作期に入ると、子どもは論理的に考える力が一層強くなり、抽象的な問題にも挑戦できるようになります。
親としては、子どもの考えを尊重し、自由に意見を言える環境を作ってあげることが大切です。
子どもが新しい考え方に挑戦し、疑問を持つことを歓迎し、共に学ぶ姿勢でサポートしてあげましょう。
マズローの欲求階層説 (Maslow’s Hierarchy of Needs)
アブラハム・マズローは人間の欲求を5段階のピラミッドとして表し、自己実現に向かう過程を示しました。
教育や発達においても応用されています。
【生理的欲求】
・食事、睡眠など生命維持に必要な基本的欲求。
生理的欲求は、最も基本的で根本的な欲求です。これは人間が生きていくために必要不可欠なものを指します。
生理的欲求が満たされなければ、他の欲求に意識を向けることができないため、まずはこの段階の欲求を満たすことが重要です。
◯生理的欲求とは?
生理的欲求は、生命維持に必要な基本的な欲求です。具体的には以下のようなものが含まれます。
• 食欲:生きるために必要な栄養を摂取すること。
• 水分補給:身体の機能が正常に働くために水分が必要です。
• 睡眠:身体と心を休ませ、回復させるために睡眠が必要です。
• 呼吸:酸素を取り入れることは命を支えるために欠かせません。
• 排泄:体内の老廃物を外に出すこと。
• 温度調整:身体の温度を適切に保つこと、寒さや暑さから守られること
子どもがまだ小さいうちは、この生理的欲求が最も重要です。
赤ちゃんが泣く理由の多くは、お腹が空いたり、おむつが濡れているからだったりします。
生理的欲求が満たされていないと、子どもは不快感を感じ、落ち着いて他のことに集中することができません。
例えば、赤ちゃんが泣いているときにはまず「お腹が空いていないか」「おむつが濡れていないか」「眠くないか」を確認することが大切です。
この段階で基本的な欲求が満たされると、子どもは安心して周りの世界に興味を持ち始めることができます。
【親御さんへのアドバイス】
赤ちゃんが泣いたときに焦らず、まずは生理的欲求を一つ一つ確認してみてください。
食事や睡眠といった基本的なことが整うことで、子どもは穏やかに過ごすことができ、その後に他の欲求(例えば、安全感や愛情)を育てていくことができます。
生理的欲求は人間の根本的な部分を支えるもので、これが満たされることで安心感が生まれ、その後の発達にも良い影響を与えることが多いです。
【安全欲求】
・安全な環境
・健康
・安定した収入への欲求。
安全欲求は、生理的欲求の次に位置する、心理的な安心感や安定性を求める欲求です。
この段階では、物理的および心理的な安全が満たされることが重要です。
安全欲求が満たされることで、人は自分の環境や周りの人々に対して信頼を感じ、安心して生活することができます。
◯安全欲求とは?
安全欲求には以下のような側面があります
• 身体的安全:危険や暴力、事故から守られること。家の中が安全で、外の世界でも安心して移動できること。
• 経済的安全:生活基盤を支える安定した収入があり、必要なものを確保できること。
• 健康的な環境:病気や健康リスクから守られ、衛生的な環境が整っていること。
• 心理的安全:心が落ち着き、ストレスや不安から解放されていること。愛されている、信頼されていると感じること。
子どもが安全欲求を感じるためには、安定した環境を提供することが大切です。
赤ちゃんや幼児は、物理的な安全だけでなく、精神的な安心感も求めています。
例えば、赤ちゃんや小さな子どもが寝ている間に「家が静かで安心して眠れること」「お父さんとお母さんがそばにいること」「危険なものが近くにないこと」が大切です。
また、親が不安定な場合、子どももその不安を感じることがあるため、親が安心して過ごす姿を見せることも、子どもの安全欲求を満たす一つの方法です。
【親御さんのアドバイス】
安全欲求は、子どもが成長し、社会的な発展を始めるための基盤を作ります。
この段階では、家の中の物理的安全を確保するだけでなく、子どもに安心感を与えるために愛情や安定感を持って接することが重要です。
• 物理的な安全:危険な物を遠ざける、家の中を整頓する、子どもが安全に動き回れるスペースを確保する。
• 心の安心感:毎日同じ時間に寝かせる、規則正しい生活リズムを保つ、子どもが不安になった時にすぐに支えてあげること。
• 親自身の安心感:親がストレスを感じていると、子どもにもその影響が伝わることがあるため、親自身が安心できる環境を作り、リラックスする時間も大切です。
安全欲求が満たされることで、子どもは心の安定を得て、次の成長段階である「愛と所属の欲求」に進むための土台が作られます。
【社会的欲求】
・愛情や所属感
・仲間とのつながりへの欲求。
社会的欲求(愛と所属の欲求)は、マズローの欲求階層説における3番目の段階で、他者との関係や絆を求める欲求です。
この段階では、人間は愛されること、仲間や家族との絆、社会的なつながりを必要とします。
社会的欲求が満たされることで、自己肯定感や安心感が高まり、他者と共に生きる力を得ることができます。
◯社会的欲求とは?
社会的欲求には以下のような側面があります
• 愛されること:他者からの愛情や関心、感謝の気持ちを感じること。
• 所属感:家族や友達、集団の一員として認められ、受け入れられること。自分の存在が重要だと感じること。
• 友情:他者との信頼関係を築き、深い友情を育むこと。
• 人間関係:他の人とつながり、コミュニケーションを取り、社会的に関わること。
子どもが社会的欲求を感じるためには、愛情のある関係を築くことが大切です。
赤ちゃんや幼児は、家族との絆が深まることで、自己肯定感や安心感が得られます。
親が愛情を示し、子どもに向き合うことで、子どもは他者との関係を学び、次第に社会的なつながりの大切さを感じ始めます。
例えば、赤ちゃんが泣いているときに親が応じて抱きしめたり、笑顔で接することは、子どもに愛されているという感覚を与え、安心感を育みます。
また、家族や友達との遊びを通して、子どもは社会的なつながりを学びます。
子どもは社会的欲求が満たされることで、心の中で「自分は大切な存在だ」と感じ、他者との関係を築くことができるようになります。
【親御さんへのアドバイス】
親として、子どもが社会的欲求を満たすために、次のような方法で支えることが重要です。
• 愛情を示す:言葉や抱っこ、微笑みを通じて愛を伝える。子どもは親から愛されていることを感じることで、安心感を得ます。
• 時間を共に過ごす:子どもとの遊びやお話を通じて、信頼関係を築く。家族とのコミュニケーションの時間を大切にしましょう。
• 社会的な関係を広げる:子どもが他の子どもと遊ぶ機会を増やすことで、友達作りや集団でのルールを学びます。また、親同士で交流することも、子どもにとって良い影響を与えます。
社会的欲求が満たされることで、子どもは愛されていると感じ、次の段階である承認欲求(自尊心の欲求)に進むための土台が作られます。
【承認欲求】
・自尊心
・他者からの評価や尊敬への欲求。
承認欲求(自尊心の欲求)は、マズローの欲求階層説における4番目の段階で、自己評価を高め、他者から認められ、尊敬されることを求める欲求です。
この段階では、個人が自分の価値を感じ、自信を持って生きるために必要な認知や承認を得ることが重要になります。
◯承認欲求とは?
承認欲求には以下のような側面があります
• 自己尊重:自分の能力や価値を認め、尊重すること。自分に自信を持ち、自己肯定感を育てること。
• 他者からの評価:他人から認められること、褒められること、尊敬されること。自分の努力や成果を周りが評価してくれること。
• 社会的地位:社会の中で自分の位置を確認し、認められること。仕事や学校での成果、友達関係の中での役割など。
子どもは、周りの人から認められ、尊重されることで、自己肯定感を高め、成長します。
親としては、子どもが努力や成果を認められる経験を重ねることが大切です。
たとえば、子どもが何かに挑戦して成功したとき、しっかりと褒めてあげることで、子どもは自分の価値を感じ、自信を持つことができます。
例えば、子どもが初めて歩いたり、お絵かきが上手になったりしたときに、「すごいね!頑張ったね!」と認めてあげることで、子どもは自分に対する自信を深め、もっと挑戦したいという意欲が湧きます。
自分ができることを他者に認めてもらうことで、子どもは「自分には価値があるんだ」と感じ、次のステップに進む力を得ます。
【親御さんへのアドバイス】
親として、子どもの承認欲求を満たすためには、以下の点を意識すると良いでしょう。
• 努力を認める:結果だけでなく、子どもが頑張った過程を認めて褒めることが大切です。努力を重視することで、子どもは自分を誇りに思うようになります。
• 具体的に褒める:「すごいね!」ではなく、「この絵の色使いがきれいだね!」や「最初は難しそうだったけど、頑張ってできるようになったね!」など、具体的に褒めることで、子どもは自分の成長を実感できます。
• 失敗を受け入れる:失敗してもそれを認め、励ますことも重要です。失敗は成長の一部であり、そこから学べることがあるという姿勢を伝えることが、自己尊重を育てます。
承認欲求が満たされることで、子どもは自分に自信を持ち、次の段階である自己実現の欲求に進むための土台が作られます。
【自己実現欲求】
・自分の能力や可能性を最大限に活かすことへの欲求。
自己実現欲求は、マズローの欲求階層説における最上級の欲求で、自己の可能性を最大限に発揮し、成長と充実を追求する欲求です。
この段階に達した人は、自分の本当の目標を理解し、それに向かって自己の能力や才能を発展させようとします。
自己実現は、人間が持っている潜在的な力を最大限に活用することで、自己の本質に近づくことを意味します。
◯自己実現欲求とは?
自己実現欲求は、個人が以下のようなことを達成したいと感じる欲求です
• 自己のポテンシャルを最大限に引き出す:自分の才能や能力を最大限に活用し、人生の中でやりたいことを実現する。
• 目標達成:自分が本当に目指すものを追求し、それに向かって努力すること。
• 自己の成長:物質的な満足だけではなく、精神的な成長や自己の完成度を高めること。
• 社会貢献:他者のために自分の力を活かし、社会に貢献すること。自分の生きる意味を見出すこと。
子どもの自己実現欲求が満たされるためには、子どもが自由に自分の興味や才能を発見し、それを追求する環境を提供することが大切です。
親は、子どもが自己表現できるように支援し、失敗や挫折も学びの一部として受け入れることが重要です。
例えば、子どもが絵を描いたり、音楽を学んだり、スポーツに挑戦したりする中で、親はその努力を支援し、成長を見守ります。
そして、最も大切なのは、子どもが「自分がやりたいこと」を見つけ、それを続けるための自信を持つことです。
親は過度に介入せず、子どもが自分のペースで自己実現を目指せるような環境作りが求められます。
【親御さんへのアドバイス】
親として、子どもが自己実現欲求を満たすために、以下のようなサポートを心がけましょう。
• 自分を表現できる機会を提供する:子どもが自由に興味を持った活動をする時間を作り、その成長を見守りましょう。
• 失敗を恐れず挑戦する環境を作る:失敗を恐れず、チャレンジを楽しむ心を育てることが大切です。失敗や挫折も学びの一部として受け入れることが重要です。
• 自分らしさを大切にする:他人と比べるのではなく、子どもが自分自身のペースで成長できるように励ますことが大切です。
自己実現欲求が満たされると、子どもは自分に自信を持ち、人生をより豊かに感じることができるようになります。
親としては、その道のりを支えることが、子どもの成長を助ける大きな力になります。
まとめ
紹介した3つはどれも子どもの成長や大人の心理を理解するうえで重要なツールです。
それぞれの理論が異なる視点を提供しているので、目的に応じて使い分けることができます。
その為、私たち児童養護施設職員は、こういった知識をベースとして、様々な応用をきかせ、考えることで子育て支援に役立てています。
一般家庭でそこまで考えることはないかも知れませんが、この記事が皆さんの何かのお役に立てればこの上なく幸いです。