児童虐待とは? その種類と事例

児童福祉

※ここで紹介する事例は、架空の人物の例であり、実際に存在するものではありません。また施設で生活する子ども達の背景とは一切関係ありません。

児童虐待は、子どもに対して心身の健康や安全を脅かす行為を指し、その影響は長期間にわたり子どもの成長に深刻な影響を及ぼします。

私は仕事を通じてたくさんの子ども達と出会う中で、様々な辛い背景を目の当たりにしたことで、少しでも世間が虐待防止に関心を持ち、親も子も平和に暮らせる世の中になればと考えました。

児童虐待の種類

主に4つあります

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト(育児放棄)

です。

以下に、それぞれの虐待の具体的な事例を挙げて説明します。

1. 身体的虐待

身体的虐待は、子どもに対して暴力を振るうことを指します。

たとえば、殴る、蹴る、物を投げつけるなどの行為がこれに該当します。

事例

小学校低学年の男の子が宿題を忘れたことに対して、父親が激怒し、何度も手で打ち続けた結果、顔に大きなアザができた。

このような暴力的な行為は、子どもの心身に直接的なダメージを与えるばかりでなく、成長過程でのトラウマを残すことになります。

2. 心理的虐待

心理的虐待とは、言葉や態度で子どもを傷つける行為です。

これには、怒鳴りつける、無視する、脅す、侮辱するなどの行動が含まれます。

事例

中学生の女の子が学校で成績が思わしくなかったことに対し、母親が「どうしてこんなにできないの?お前はダメな子だ」と毎日罵倒した。

心理的虐待は、子どもの自尊心や自己肯定感を著しく損なう結果となり、情緒不安定や対人関係に問題を抱える原因となることがあります。

3. 性的虐待

性的虐待は、子どもに対して性的な行為を強要する、または不適切な接触を行うことを指します。

これは極めて深刻な問題であり、被害を受けた子どもは長期的に心に深い傷を負います。

事例

思春期に差し掛かった女の子が、親しい親族によって性的な行為を強要され、その後も家族に相談できず孤立していた。

性的虐待は、被害を受けた子どもが自分自身の価値を否定し、心身の健康を大きく損なう危険性が高いです。

4. ネグレクト(養育放棄)

ネグレクトとは、子どもの基本的なニーズである食事、清潔、教育、医療などを十分に提供しないことを指します。

事例

ある幼児が両親の無関心によって一日中放置され、十分な食事や衛生管理がされておらず、栄養失調や病気になった。

ネグレクトは、子どもの身体的成長だけでなく、社会性や情緒の発達にも悪影響を及ぼし、孤立感や無力感を強めます。

児童虐待が及ぼす影響

児童虐待は、子どもの心身の不調や、社会的な発達に対して甚大な影響を与えます。

身体的な虐待を受けた子どもは、怪我や病気を発症するだけでなく、後遺症として慢性的な身体の痛みを抱えることがあります。

心理的な虐待や性的虐待は、自己肯定感を損なわせ、長期的にはうつ病や不安障害、パニック障害といった精神的な問題に繋がります。

虐待された子どもは、成人後もその影響を引きずることが多く、他者との信頼関係を築くことが困難だったり、自分自身の価値を見出せなかったりします。

ネグレクトのように基本的な養育が欠如していた場合、学校生活や社会生活での適応能力が低く、社会からの孤立感を強く感じるようになります。

虐待する親の気持ち

児童虐待を行う親は、必ずしも自らが「虐待をしている」と自覚しているわけではありません。

多くの場合、親自身が過度なストレスや社会的なプレッシャーを抱え、それが子どもに向かう形で暴力や無関心となって現れます。

親の認識:虐待と自覚があるか?

虐待している親の中には、自分の行為が虐待に該当するとは認識していない場合があります。

たとえば、過度に厳しいしつけや体罰を「子どもを良くするため」と考え、正当化しているケースもあります。

特に、親自身が虐待的な家庭環境で育った場合、それを「普通」と認識し、無自覚のうちに同じ行為を繰り返すことがあります。

虐待を指摘された時の親の感情

もし、ある日突然「あなたは虐待しています」と指摘された場合、多くの親は驚きやショックを受けるでしょう。

なかには否定的な反応を示し、自己防衛的な態度を取る親も少なくありません。

また、社会的な制裁を恐れるあまり、問題を認めることに抵抗を感じる場合もあります。

自己否定感や罪悪感から、ますます閉鎖的になり、子どもとの関係が悪化することも考えられます。

親が改善の意思を持つためには?

親が虐待を自覚し、改善に向けた意思を持つためには、まず非難や責め立てではなく、共感や理解を示すアプローチが重要です。

親が抱えているストレスや悩みに耳を傾け、「あなたも大変な状況にいるんですね」という言葉をかけることが第一歩です。

パパイクジ
パパイクジ

虐待を肯定する必要はないけど、悩んで困っているということに寄り添うだけで当事者はとても救われるんだ。

そして

「あなたの行動は子どもに深い影響を与えています。一緒に子どものために何ができるか考えましょう」

といった、協力的な姿勢でアプローチすることで、親も改善の意欲を持ちやすくなります。

子どもの心の声

虐待を受けた子どもたちは、心の中で親に対して様々な思いを抱えています。

しかし、恐怖や不安から自分の気持ちを表現することができず、長い間その感情を抑え込むことが多いのです。

ある少年の事例を紹介しましょう。

小学5年生の男の子が、日常的に母親から怒鳴られ、時には手を上げられていました。

もう!!なんでいうこと聞かないの!

彼は母親が自分を愛していないと思い込み、心を閉ざしてしまいます。

どうせ嫌われてる。僕が悪いんだ。

ある日、学校の先生が

お母さんに本当はどうしてほしい?

と優しく尋ねた時、彼は涙を流しながらと答えました。

ただ、抱きしめて欲しい。好きだといって欲しい。

この言葉を母親に伝えた時、母親も涙を流し、自分がどれだけ子どもに対して愛情を示すことができていなかったかに気づいたのです。

まとめ

児童虐待は、子どもに対して心身の成長に深刻な影響を与える問題であり、その解決には社会全体の協力が不可欠です。

虐待の種類や親の認識、そして子どもの心の声を理解することで、私たちは少しずつではありますが、虐待を防ぐための道筋を見つけることができるでしょう。

親もまた、社会的なストレスやプレッシャーの中で苦しんでいることが多いため、彼らを非難するだけでなく、支援の手を差し伸べることが重要です。

そして、子どもたちが安心して愛情を受けられる環境を整えることが、私たち全員の課題です。